バルコニー日和

のんびりと過ごす日々のよしなしごと

矯正記録②浮きが気になる…

『インビザライン』という、マウスピースで行う歯の矯正を始めて早2ヶ月弱。

現在8枚目のアライナー(マウスピース)をつけています。

はまりはするものの、マウスピースと前歯の間に隙間が目立つようになってきました。これば”浮き”と呼ばれる現象らしく、ちょっと気になる……。

 

先日歯科医院に定期検診に行ったので聞いてみると「ああ、確かに浮いちゃってますね」とのこと。

その結果、7日ごとの交換だったのを、しばらく10日交換に伸ばして様子を見ましょうということになりました。

 

前歯の移動はマウスピース矯正が苦手とする部位らしく、しっかり時間をかけて装着して、定着させるのが大事なのだそうです。

チューイという、シリコンでできたマウスピースを密着させるための棒状の道具があるのですが、これもこれまで以上にしっかり、1本の歯につき3秒くらいかけてぎゅーっと噛むように、とのこと。

 

これでもダメだったら前歯の上下にゴム掛けをしましょう、と言われて戦々恐々。

そんな目立つところにゴム掛け、できればしたくない……!

 

その日から、これまで以上に気合を入れてチューイを噛むようになりました。そんなに一日中噛むようなものでもないとは思うのだけれど、噛めるときはひたすらぎゅーっと。

 

わたしのチューイは緑色なので、噛んでいると「……きゅうり?」などと言われますが背に腹はかえられません。

職場でも、幸い端の席なのをいいことに、人目をはばかって噛み噛み。

 

マウスピースの装着時間はApple Watchと連動したアプリで管理していて、外食しないときは22時間、飲み会などがある日も20時間は切らないように意識しています。

 

次回の通院は2ヶ月後。

どうか、それまでにこの浮きが解消されていますように……!

前歯のゴム掛けを回避できたか否かはまた次回に。

浜町ホテルでひとり時間②

emilinbalcony.com

の続きです。

 

翌日は快晴!

目覚めてカーテンを開けると、レースのブラインド越しに朝の光が降り注ぎます。

 

チェックアウトは11時。

昨夜の助六の残りをつまんでから、朝のコーヒーを飲みに行きました。

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向かったのは、キャロットケーキを目当てに何度か訪れたこともある『SINGLE O』。ホテルのほぼ向かいと言ってもいい距離にあります。

人気のお店ですが、開店の8時に合わせて行ったのでテラス席に座ることができました。

デカフェラテを頼んで待っていたら、みるみるうちに行列が。海外の方も多めです。

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コーヒーを飲みながら通りの向こうに目をやると、ホテルの並びにあるパン屋さんにも行列ができていました。

 

あとで行ってみようと決めて、次に向かったのは徒歩15分ほどの距離にある『小網神社』。

なんでも最近パワースポットとしてすごい人気なのだとか。

 

朝とはいえ週末だから混んでるかな?と思いましたが、社務所もお参りもまったく並ばずにスムーズ。お守りを買って振り返ったら行列が出来始めているところでした。

並ぶ時は数時間待ちだそうなので、なんともラッキー。

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ホテルまで戻って、先ほど並んでいたパン屋さん『ブーランジェリージャンゴ』を覗くと、こちらも行列がなくなっていてすぐに入れました。ラッキー続きでうれしい。

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パン・オ・ショコラをひとつ買って、コーヒーと一緒にお部屋でゆっくりいただきました。

 

チェックアウトまでのひとときは朝風呂に。お風呂にあかり取りの窓があるおかげで、電気をつけなくても光が差し込んできて幸せな気持ちになれます。

ほかほかにあったまってくつろいでから、のんびりとチェックアウト。

 

おなかはまだすいていなかったので、Google mapで見つけた『Comorebi cafe』に行ってみることにしました。ホテルからは歩いて15分ほど。

着いてみると、緑に囲まれた、ガレージのようなこじんまりしたオープンカフェ! 知らなかったらお花屋さんかと思って通り過ぎてしまいそう。

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瀬戸内で育ったノーワックスのレモンを使ったレモネードはさっぱりした甘さ。

添えられたレモンは皮まで食べられるのだそう。

「食べてみて!」と女性の店主に言われて恐る恐るかじってみると、ジューシーな酸味が口の中に広がりました。思ったほど酸っぱくなくてほっと一安心。一気に気温が上がった、雨上がりの蒸し暑い日にぴったりの爽やかさでした。

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きさくな店主に近くのスポットをいろいろ伺って、隅田川を渡ってしばらくお散歩。

 

ランチはまた浜町まで戻って、タイ料理のお店で『グリーンカレーそうめん』なるものをいただきました。

暑かったのでビールとともにテラス席で。

風が涼しくて心地よく、オレンジ色をしたタイミルクティーも追加で頼んで、ゆったりとした時間を過ごしました。

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その後も雑貨屋さんやインテリアショップなどを巡ったり、人形町・浜町界隈をあちこち歩き回りました。

 

我が家から30分とかからない場所なのに、非日常感たっぷりの一泊二日。帰りに銀座まで出ると、日常に戻ってきてしまった寂しさを覚えました。

 

HAMACHO HOTEL、またふらっと泊まりに行きたいです。

 

浜町ホテルでひとり時間①

ここ数年ご無沙汰だった『ひとりで都内のホテルに籠る』時間を、久しぶりに満喫してきました。 

 

今回泊まったのは、日本橋浜町にある「HAMACHO HOTEL」。

交通の便もいいし家からもそこまで遠くないのに、浜町ってあんまり行く機会がないと思ったのと、前に一度ホテルの前を通ったことがあり、素敵だなと憧れていたのです。

 

当日、仕事を早めに切り上げて人形町駅に降り立ったら、バケツをひっくり返したようなどしゃ降り。

もともと夜はホテルでのんびり過ごそうと決めていたので、チェックイン前にお籠もり用の食料をあれこれ買い求めました。

『人形町今半 惣菜本店』ではすき焼きコロッケにテイクアウト用のミニすき焼き。

『柳屋』ではパリパリの鯛焼き。

『志乃多寿司』ではお買い得品の助六寿司。

さらに、道すがら『野沢酒店』さんを見つけたので、クラフトビールも一本買って、おいしいものをたっぷり抱えてホテルへ向かいました。

 

HAMACHO HOTELは各階のバルコニーに緑がふんだんに使われたおしゃれなホテル。

ダブルルームを予約していたのですが、空きがあるということでアップグレードしていただけました。

今回のお部屋は3階のコーナールームです。

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窓の向こうに新緑が見えて、都心にいることを一瞬忘れてしまいそう。

外は雨風がさらに激しくなってきていたけれど、部屋のなかはとても静か。

ちびちびとビールを飲みつつ、買ってきたお惣菜を広げてささやかなひとり宴会の始まりです。

ビール少々ですっかりほろ酔い。助六寿司は食べきれなかったので、朝ごはん用に残すことに。

 

アメニティはフロント横から持ってくるスタイル。チェックインのときに取り忘れていたので、食後に酔い覚ましがてら見に行ってみました。

歯ブラシなど必要なものを取って、ふと横を見ると、ソルトバスバーが! バス用ソルトに、複数の香りのアロマオイルやドライハーブも置いてあって、好みのアロマバスソルトを作れる仕組みです。

バスソルトはスプーン2杯。ばらとラベンダーのドライハーブを入れ、ラベンダーのオイルを振りかけると、ふわりとした優しい香りが広がりました。

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お部屋に戻ってアロマバスにゆっくり浸かり、部屋着に着替えて広いベッドにごろん。

家から持ってきた本を読みつつ、時折窓の外に目を向けては、強風で揺れる木々の様子を「すごいなぁ……」なんて他人事みたいに眺めていました。

 

その日は雨の音を聞きながら早めにすやすや。

 

ホテルのまわりの散策は翌日に。

 

②に続きます。

念願の益子陶器市デビュー

長年行きたくて、でもとても混んでいると聞いて尻込みしていた益子の陶器市。

10年以上通い続けている「陶器市マスター」と言っても過言ではないさとみさんご夫婦にアテンドしてもらい、ついに行くことができました。

 

当日は朝6時に自宅を出発。運転は夫。

実はその前日、兵庫県の宝塚まで、大好きな礼真琴さんの退団公演を観に遠征していました。しかも新幹線が停電で遅れ、帰宅も遅くなってしまったのです。

普段は8時過ぎに起きる朝寝坊なので、ほぼ寝ぼけた状態での出発となりました。


陶器市は一大イベントのため、朝早く出ないと道路が大混雑してしまうのだそうです。

また、開催は4/29〜5/6ですが、会期の終盤になるとめぼしいものがなくなってしまうとのこと。行ける範囲で、できるだけ早めかつ、平日を狙っての計画でした。


初日に行った知人は、なんと朝4時出発だったそうで「6時でも遅いかも?」とドキドキしていましたが、高速も下道もスムーズに進み、あっという間に益子に到着。

公共の駐車場もありますが、この時期はとても混むため、民家が開放している駐車場が便利とのこと。無事に駐車できました。


陶器市って、てっきり大きな会場がひとつあって、そこを見て回るものかと思っていたのですが……実際は、町全体が陶器市!

大きな通りの端から端まで、いくつもの会場が広がっていて、何も知らずに行ったら入口あたりで力尽きてしまいそうな規模です。

よく知っている人におすすめのお店を教えてもらいながら回れたのは、本当に助かりました。

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途中、キッチンカーでフランクフルトやレモネードを楽しんだり、カフェでおすすめのゆずチーズケーキを食べてひと休みしたり。

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広大な陶器市をのんびり歩きながら、心ゆくまで見て歩きました。

最後に丘の上の会場に登ると、さわやかな涼しい風が。少し暑い日だったこともあり、心地よさも最高潮でした。


今回欲しかったのは、

・私用の小さめの飯碗

・富良野のドライラベンダーを飾る花瓶

だったのですが、実際に購入したのは──

・ふちのモザイク柄が美しい小皿

・淡いグリーンがきれいなお皿

・お花の形の木のお皿

・くすみグレーの陶器のミルクポット(→ラベンダーを飾る用に)

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あとから考えると、2人暮らしなのでお皿は2枚ずつ買ってもよかったかなとも思いましたが、少しずつ買い足していくのも楽しいかもしれません。

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帰りは渋滞を避けて昼過ぎには益子を出発。途中のサービスエリアで海鮮丼を食べて、早めに帰路につきました。

早起きが効いて、帰宅後はそのまま即寝……。


はじめての陶器市、最高の一日になりました。

これはまた絶対に行きたい!

歯科矯正始めました

子どもの頃からずっと気にしていた歯並び。

歯医者さんは苦手だしもういい大人すぎるし、来世に持ち越そうかな……と半分諦めかけていたのですが、一念発起して矯正を始めることにしました。

 

まずはカウンセリングにチャレンジ。

2件の矯正歯科医院に行ったところ、どちらも『矯正は可能』との回答でした。

1件めでは、私の症例だとワイヤー矯正になるとのこと。2件めも最初はワイヤーと言われましたが、「ただ、ワイヤーの方がやはり痛みが強いんですよね……」。歯医者嫌いの私にはマウスピースが向いているのではと、他院の専門医にも相談して検討してくれました。その結果、何とかマウスピースで矯正ができることに!

 

まずは虫歯を治したり、抜歯をしたりという手順を踏んでから矯正に入るのですが、なんとその準備に1年以上かかってしまいました。

 

カウンセリングに行ったのが2023年の12月。

その後、紹介された一般歯科で根管治療などを受け、いよいよ抜歯……というところでハプニング。私の歯が硬すぎたのか、1時間半の格闘の末、抜けないまま切開した部分を縫合することになってしまったのです。

 

抜けなかった歯を今度こそ抜くために大学病院に紹介状を書いてもらったのが3月、初診の予約が取れたのが6月。抜歯の予約はさらに先の9月と10月。

9月は無事抜歯できたものの、10月は当日にまさかの発熱で延期。次に予約が取れたのは2月! 大学病院の混み具合を実感しました。

 

そんなこんなで2025年の2月末、ようやくすべてが完了し、矯正のスタートラインに立てたのです。

長かった……。

 

改めて矯正歯科で検査を受け、治療計画を組み直してもらい、やっと契約。4月後半に私のためのアライナー(マウスピース)が届いたとの連絡がありました。

ついについに!です。

 

ちょっぴり緊張しながら矯正歯科へ。

まずはスペースを開けるために歯を少し削ってから、表面にアタッチメントという小さな突起と、ゴムを掛けるためのボタンを装着してもらいました。

 

続いてアライナーの付け外しと、ゴム掛けの練習も。ゴム掛けが特に難しくて、慣れるまでは時間がかかりそうです。

 

マウスピース矯正はワイヤー矯正よりは自然とよく言われるけれど、思ったよりも目立つかも。ゴムも歯に引っ掛かってるし。

 

アライナーは最初は10日間、3枚めからは7日で交換。1日20〜22時間の装着が必要で、食事と歯磨きの時だけ外せます。

もし19時間以下になってしまう日があったら、交換日数を1日延ばしてくださいね、とのことでした。

 

お手入れ方法なども聞いて、いよいよ矯正生活が始まりました!

 

心配していた痛みは、ゴム掛けしている上の前歯が噛むときに痛む程度。アライナーの異物感は否めないけれど、食事さえしなければほとんど気になりません。

慣れてくれば、徐々に痛みも減るかなと期待しています。

 

ちなみに、アライナーを付けたまま飲めるのは、基本的には水かぬるま湯のみ。糖分が入ったもの、コーヒーや紅茶など色のつくもの、熱いものはNGです。カモミールティーなどは大丈夫とのこと。

ふらっとカフェに立ち寄るのが難しくなりそうで、カフェ大好きな私には少しつらい日々になるかもしれません……。

 

でも、やっと始まった念願の矯正。

楽しみながら頑張ります!

春のディズニーシー

春は私にとっていちばん慌ただしい季節。

そんな忙しさがひと段落したタイミングで『夢と魔法の国』ディズニーシーに行ってきました。今回は、10数年ぶりに訪れるという友人夫婦とのおでかけです。

 

コロナ禍を経て、システムも大きく変化。久しぶりにディズニーに行く友人たちにできるだけゆったり過ごしてもらいたくて、事前にプランを練りました。

 

来園10日前にキャンセル拾いでシー随一のレストラン『マゼランズ』のディナーを予約できたので、次は乗りたいアトラクションをDPA(アトラクションの有料パス)で取るべく、情報サイトとにらめっこ。

人気のアトラクションほど早く売り切れてしまうので、購入順やタイミングも重要なのです。

こうして計画を練るのも、行く前から旅が始まっているようで楽しみのひとつです。

 

開園待ちで疲れないように開園時間の少し前の到着を目指しましたが、9時開園の15分前に到着したものの、入園できたのは9時半近く。

大人気の『アナと雪の女王』のDPAはすでに完売……が、いちばんのお目当ての『ソアリン』は無事確保できました。

 

アプリでショーのエントリー抽選にもチャレンジ。『ビックバンドビート』は残念ながら外れ、ダンスプログラムの『ジャンボリミッキー』は当選!

さらに、当日枠で『ダッフィー&フレンズのワンダフル・フレンドシップ』のランチの予約もできました。これでランチ、ショー、ディナー、アトラクションーーという大まかな流れが整ってひと安心です。

 

ダッフィーのショーを待つ間、DPAの再販タイミングを見計らっていたら、なんと『アナと雪の女王』のDPAが復活していて、こちらも無事ゲット!

 

数年ぶりに見たダッフィーのショーは、以前より仲間が増えてにぎやかに。個性たっぷりなキャラクターたちが次々に登場して、目が離せません。

プレゼントのコースターはステラ・ルーといううさぎのイラストでした。

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ランチ後「ちょっと物足りないかも」と思って、追いスモーキーターキーレッグ。小腹を満たしてから『アナと雪の女王』へ。

無事乗れた『アナと雪の女王』は、相変わらずの面白さ。端の席に乗っていたのでアップダウンのたびに水がかかってスカートが濡れちゃったけど、それもまた一興です。

 

その後は『シンドバッド』や回転木馬に乗ったり、『ジャンボリミッキー』ではステージ上のミッキーやミニーに合わせて座ったままダンスしたり。

メリーゴーラウンドでは、友人の旦那さんがいきなり♩フガフガー回転木馬に乗って〜、とよくわからない歌を歌い出してみんなで大笑い。(後で聞いたら、昔NHKで流れていた歌だったそうです)

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ディズニーシーを一周する船に乗ったり、『水上のハニーハント』アクアトピアに乗ってくるくると水の上を回ったり。

ザンビーニのリストランテでは満開の藤棚の下でひとやすみ。藤の花の甘い香りも心地よく、目にも心にも優しい贅沢なひとときでした。

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そして夕方、お腹が空いてきたところで『マゼランズ』へ。

コース料理はどれも独創的でおいしくて、メインに選んだ銘柄鶏はスパイス香る緑のペーストが絶品。思わず「おいしい…」と目を見張ってしまうほど。発酵バターとパンも絶品で、ついつい食べすぎてしまいました。

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お店を出ると、空はすっかり夜の色に染まっていて、ちょうど水上ショー『ビリーヴ!』がスタートするところでした。

華やかなショーを人混みの隙間から堪能して、いよいよ最後のお楽しみ『ソアリン』です。

DPAでスムーズに入場し、空の旅へ。世界旅行の高揚感に包まれて外に出ると、花火が真後ろで打ち上がりました。

まさかのベストタイミング!

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この日は『ジャンボリミッキー』も『ダッフィー』も最前列だったし、本当にラッキーな1日でした。

 

春の夜空を彩る花火に送られて帰路へ。

耳の形のポンポンがついたディズニー帽をシーを出る前にそっと脱いで、夢の国から現実に戻りました。

霧のむこうのふしぎな町

何か本を一冊紹介してください、というテーマで話をすることになりました。

ぱっと思いついたのは柏葉幸子さんの童話『霧のむこうのふしぎな町』。

この作品と、バーネットの『秘密の花園』が、私をつくった物語と言っても過言ではありません。

 

主人公は、すこしふっくらした体型の女の子・リナ。

夏休みを使って、父の昔の知り合いを訪ねに、送られてきたピエロの柄(え)のついた傘を手に『霧の谷』へ向かいます。

 

リナは、山の中で霧に囲まれ、気が付くとレンガ畳みの小さな町に迷い込んでしまいます。そこには小さなお店がいくつかと、大きなお屋敷。

お屋敷は下宿屋で、ピコットばあさんという意地悪な家主に「働かざる者、食うべからず」と言い渡されたリナは、何日かずつ町のお店で働く……という物語。

 

本屋さんのお仕事では、美しい羽ととんでもない口の悪さを持つオウムに出会い、

せともの屋では壺に変えられたワガママ王子とのちょっとした恋?のようなやりとり、

夢のようにおいしいのに、いくら食べても太らないお菓子屋さんでは、ちょっと切ない家庭の秘密をのぞいたり……

ページをめくるたびに胸が高鳴って、夢中で読みふけりました。

 

リナの部屋の窓の外にはオペラピンクの雲のような百日紅が咲いています。

その描写にうっとりして、百日紅という花も大好きになりました。

 

この本を手に取ったのは小学生のころ。

舞台になった地方に行けば、もしかしてあの町にも行けるんじゃないか……なんて、いまでも本気で夢見てしまいます。

 霧の谷のくわしい場所は作品内で言及はされていないものの、作者の柏葉幸子さんが岩手の出身なのと、道を聞いた駅員さんたちの方言が東北弁なので、おそらく岩手県。

もう少し大きくなってから、宮沢賢治の作品を好きになり岩手への興味が深まりましたが、最初に「岩手に行ってみたい!」と思ったのは、間違いなくこのお話がきっかけです。

 

ちなみにこの町(めちゃくちゃ通り)には「必要な人は来られる」ので、本当はいつでも、どこからでも行けるんですけどね。

 

奥付で作者の柏葉幸子さんが薬剤師でもあると知って、薬剤師という職業にも憧れました。理系は苦手すぎて……というか、 嫌いな動物の写真が怖くて生物の授業を受けるのもつらかったので、その夢は早々に断念しましたが。

 

いろんなお店で様々な人と交流し、ふしぎな体験を重ねていくこの物語は、きらきらしたおもちゃ箱みたいでとっても魅力的でした。

 

出てくるお料理やお菓子もどれもおいしそうで。食べてもふとらないチョコレートキャンディーに絶品のサンドイッチ、たくあんを挟んだ珍妙な黒パンサンドまで、食べてみたいものだらけです。

 

いまでも「私にもピエロの傘のお迎えが来ないかなぁ」なんて思ったりして。

正式なルートは無理でも、本屋さんやお菓子屋さんにふらっと迷い込んで、あの町の空気を少しだけ感じられたらいいのに……と、そんなことを考えながら、ときどき本棚のこの一冊を手に取っています。

 

挿絵は複数あるようですが、お話の雰囲気にぴったりなタケカワこうさんのイラストがお気に入り。